先日、免許証の更新に行ったのですが、もらった交通安全のパンフレットに「咄嗟の判断が命を守ります」と書いてありました。
でも、“咄嗟”ってどう読むんだろう?よくわからなかったので、調べてみました!
咄嗟の意味や読み方は?
何はともあれ、読み方から確認していきたいと思います!
まずは、それぞれの漢字を調べてみると
【咄】トツ
①しかる。したうち。また、その声。
②やあ。呼びかけの声。
③おや。
【嗟】サ[一]
①ああ。感嘆またはなげき悲しむ声。なげく。なげき。
[二]ひといきの間。
とありました。また、
【咄嗟】とっさ
①事が急なこと。あわただしい。≪同≫咄咤(とつた)
②しかる。≪同≫咄叱(とつしつ)
(以上 角川書店『角川新字源改訂版』)
と“咄嗟”の読み方と意味も紹介されていました!
“咄嗟”は“とっさ”と読むのですね!
それにしても・・・“咄”の字に、「舌打ち」の意味があるとは、驚きました。
舌打ちというと、日本人からするとあまりいい印象のあるボディーランゲージではありませんが、漢字が生まれた中国では伝統的に、相手を賞賛するときや、いい気分の時に舌打ちするという文化もあるそうですよ。
では、他の辞書でも“咄嗟”の意味を見ていきましょう。
- ごくわずかな時間。(小学館 『デジタル大辞泉』)
- きわめて短い時間。あっという間。一瞬。(三省堂 『大辞林 第三版』)
- ごくわずかな時間。(ベネッセ 『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』)
- ごくわずかの時間。反射的な行為などにいう。(角川学芸出版『類語国語辞典』)
- 切迫した状況下におけるごくわずかな時間。(三省堂『新明解国語辞典 第七版』より)
とありました。
どの辞書でも共通して、シンプルに“咄嗟”は「ごくわずかな時間」と説明していました。
咄嗟の正しい使い方の例文は?
では実際には“咄嗟”はどのように使えばいいのでしょうか?引き続き辞書を見ながら考えてきたいと思います!
- 「咄嗟の判断」「咄嗟の行動」(小学館 『デジタル大辞泉』)
- 「 -の間の出来事だった」 「 -の場合に役に立つ」(三省堂 『大辞林 第三版』)
- 「―の機転」「―に避ける」(ベネッセ 『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』)
- ―の機転。突かれた時―に身をかわした。(角川学芸出版『類語国語辞典』)
- 「―の判断/―に〔=すぐには〕返事が出来なかった」(三省堂『新明解国語辞典 第七版』より)
上の意味合い調べでも出てきましたが、『切迫した状況下におけるごくわずかな時間。』と三省堂『新明解国語辞典 第七版』で解説していた通り、これらの例文をみると、“咄嗟”には「切羽詰まった状態での反射的な行動」というようなニュアンスも含まれているのだなと思いました。
咄嗟の語源は?
さて、“咄嗟”の意味合いのところでも少し出てきましたが、咄嗟の語源についてもう少し考えていきたいと思います。
- 「咄」も「嗟」も、驚くなどして思わず発する声(三省堂『新明解国語辞典 第七版』より)
- 「咄」は舌打ちをしてしかること、「嗟」は嘆息の意(三省堂 『大辞林 第三版』)
と各辞書では紹介されています。また、“嗟”という漢字には「ひといきの間。」(角川書店『角川新字源改訂版』)という意味合いもありましたよね。
これらのことから、“咄”も“嗟”も、「何か伝えたいことがあって考えて話す文章」ではなくて、何かの状況や相手へのリアクションとして「思わず出てしまった息のような声(=意味合いのある長い文章ではない)」と考えることができます。
ですので、そのようなニュアンスから、“咄嗟”は「ごくわずかな時間」という意味を持つようになっていったのだと考えられます。
咄嗟の類語は?
続いて、“咄嗟”の類語を調べていきたいと思います!
角川学芸出版『類語国語辞典』によると、“咄嗟”は≪時間・期間が短い≫という意味をもつことばのグループに分類されています。
このグループには他に
- 瞬間
- 一瞬
- 瞬時
- 刹那(瞬間。もと仏教語。)
などが入っていました。
中でも「反射的に」というようなニュアンスをもつ【瞬時】は特に“咄嗟”と近い言葉ですね!
咄嗟の英語表記は?
最後に、“咄嗟”の英語表記についても調べてみたいと思います。
“咄嗟”に対応する英単語としては、
〔とっさの〕
quick/prompt
〔とっさに〕
at once/instantly/in the twinkling of an eye/on the spot
(研究社 『新和英中辞典』)
などが紹介されていました。
【quick】や【at once】【instantly】は一般になじみのある単語ですよね。
【in the twinkling of an eye】は“目にも留まらぬ速さで”という意味合いの言葉です。
上の類語調べのところで出てきた【瞬時】ということばの“瞬”は英語にすると【twinkling】になりますよね。
こんなところに日本語と英語の共通点があるのはとても興味深いです。
“咄嗟”ということばに比べて、英語表現は簡単なものが多いですね。
ただ、これらの英単語を使っても“咄嗟”という言葉の持つ微妙なニュアンスが必ずしも伝わるわけではないので、注意が必要です!
では、最後までお読みいただきありがとうございました!