先日、先輩から来た集まりのお知らせに「会費は年齢を斟酌しました」と書いてありました。“年齢を斟酌”?正直、全然意味が分かりませんでした・・・。
そこで、今回は“斟酌”について調べてみたいと思います!
斟酌の意味や読み方は?
まずは、“斟酌”それぞれの漢字について調べてみました。
【斟】
[音]シン[訓]くむ
水や酒などをくむ。転じて、事情をくみとって、手心を加えること。
【酌】
[音]シャク[訓]くむ
1 酒をつぐ。くむ。「晩酌」
2 先方の意見や事情をくみとる。「参酌・斟酌(しんしゃく)」
(以上、小学館『デジタル大辞泉』より)
つまり、“斟酌”はくみとるという同じ意味の漢字を重ねた表現なんですね!
そして、読みは“しんしゃく”であることも分かりました。
では続いて、意味についてもみていきたいと思います!
- 相手の心情や事情を考慮に入れて、ほどよく取りはからうこと。
- 条件などを照らし合わせて適当に処置すること。
- ひかえめにすること。遠慮。
(ベネッセ『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』)
- 相手の事情や心情をくみとること。また、くみとって手加減すること。
- あれこれ照らし合わせて取捨すること。
- 言動を控えめにすること。遠慮すること。
(小学館『デジタル大辞泉』より)
- 相手の事情・心情などをくみとること。
- 手加減すること。手ごころ。
- 条件などを考え合わせて、適当に取捨選択すること。
- 遠慮すること。ためらい。
(三省堂『大辞林 第三版』より)
- 先方の事情を考慮に入れる(入れて穏便に取りはからう)こと。
- あれこれの条件・情勢を考え合わせて、適当に処置すること。
(三省堂『新明解国語辞典 第七版』より)
とありました。
各辞書により、若干の違いはありますが調べたことからざっくり私なりにまとめると、“斟酌”は、
- 相手の事情や気持ちをくみとる。また、それによって手加減すること。
- 条件を考慮して、取り扱いをきめること。
- 遠慮する。
という意味になります。
ちなみに、小学館『デジタル大辞泉』では《水や酒をくみ分ける意から》、また、三省堂『大辞林 第三版』では〔「斟」も「酌」も汲む意〕、と言葉のもともとの意味にも触れていました。
このことから、“液体を汲む”という意味合いから “心情・事情をくみとる”という意味合いに変化していったということも分かりました!
斟酌の正しい使い方の例文は?
それでは、“斟酌”は具体的にはどんな風に使えばいいのでしょうか?
続いて、辞書にのっていた例文を見ていきたいと思います。
上で触れたように、“斟酌”には大きく分けると三つの意味合いがありましたので、それぞれの意味合いに分けて、例文を紹介します!
【①相手の事情や気持ちをくみとる。また、それによって手加減すること】
- 「採点に―を加える」(ベネッセ『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』・三省堂『大辞林 第三版』)
- 「採点に―〔=手心〕を加える/年少の点を―する」(三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
- 「相手の立場を-して裁定を下す」(三省堂『大辞林 第三版』)
【②条件を考慮して、取り扱いをきめること】
- 「両者の言い分を―する」(ベネッセ『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』)
- 「市場の状況を斟酌して生産高を決める」(小学館『デジタル大辞泉』より)
- 「収入に応じて会費を―する」(三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
【③遠慮する】
- 「なんの―する必要があるものか」(ベネッセ『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』)
- 「斟酌のない批評」(小学館『デジタル大辞泉』より)
- 「何の―〔=遠慮〕もあるものか」(三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
①と②の例文の使い分けはかなり微妙に見えますよね。私は、①の方が斟酌する側に感情的なニュアンスが強く、一方②は単に状況に応じて対処する場合という違いがあるのかなぁと思いました。
また、③は私が見た例文ではすべて、“斟酌”+“しない”の形の表現で使われているのがとても興味深いと思いました!
斟酌の類語は?
では、“斟酌”にはどんな類語があるのでしょうか?
角川学芸出版『類語国語辞典』で見ていきたいと思います。
- 手加減・取り計らう
- 慮り(おもんぱか‐り 細かく気を配って処置すること。「おもんばかり」とも)
- 手心(状況によって適当に取り計らうこと。手加減)
- 御手盛り(おてもり 自分に都合の良い計らい)
- 手控える(控えめにする)
- 容赦(ようしゃ 落ち度を責めないこと。手加減すること)
などが出てきました。
意外だったのが、この辞書の中では、2017年の流行語大賞になった “忖度”は“斟酌”と類語とはされていないことでした!
斟酌・忖度の違いは?
では、“斟酌”と“忖度(そんたく)”はどのように違うのでしょうか?
同じく、角川学芸出版『類語国語辞典』で今度は“忖度”の類語を見てみたいと思います。“忖度”は〔物事の事情や人の心を推し量ること〕という意味を持つ言葉に分類され、
- 推し量る
- 推察
- 憶測
などと同じグループとされています。
一方、“斟酌”は〔物事をほどよく整えること(手加減など)〕〔物事を取りはからってかたをつけること(取りはからうなど)〕〔行動を控えめにしてかしこまること(遠慮など)〕と同じグループとして紹介されています。
このことから、“忖度”はただ単に推測すること、一方“斟酌”は推測の上行動することと違いがあると考えられますよね!
“斟酌”の英語表記は?
最後に“斟酌”を英語では何といえばよいか調べてみました!
- consider something
- take something into consideration
- allow for something
- in consideration of…
- You don’t have to pull your punches when you reprimand [admonish] him. (説諭をするのに何の斟酌もいるものか)(以上 『研究社 新和英中辞典』より)
などの表現が紹介されていました!
【consideration】は【consider】の名詞形で「考慮」の意味ですね。
【allow】は「認める」の意味があります。
今回“斟酌”を調べてみて、一番興味深かったのは、“斟酌”と“忖度”の違いについてでした。
ただ、現在、テレビやインターネットでは、“斟酌”と同じような意味で“忖度”を使用している場面も結構あるような気がします。
もしかすると、徐々に“斟酌と“忖度”の意味の差は無くなっていくかもしれませんね!
では、長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!