「饒舌とおしゃべりって違うの?」
これ、先日、会社の飲み会で気になったことなんですが…
いつもは賑やかなAさんが、その日の飲み会では〈お酒が入ると饒舌になる〉と評判の課長のとなりで静かに話を聞いていたので、「いつもは饒舌なAさんも、今日は聞き役だねー」と私が言うと、隣にいた同僚が、「ん~、Aさんはどちらかっていうと、饒舌というよりもおしゃべりですねー」と返してきました。
…あれ?饒舌とおしゃべりって違うの?
普段あまり気にせずにこの言葉を使っていたので、同僚にそう言われて少しびっくりしました。と同時に、なんだかその微妙な違い、しっかり知っておいた方が良さそうだったので、今回は“饒舌”という言葉についてちゃんと調べてみることにしました。
饒舌(冗舌)の意味や読み方は?
見慣れない漢字で、なんと読むのか少し戸惑ってしまいますが、“饒舌”(じょうぜつ)と読みます。
饒舌の“饒”という漢字は、「ジョウ」という読み方しかないようなので、この漢字を見たら迷わず「ジョウ」と読んでしまっていいでしょう。一度覚えてしまえばもう迷うことはなさそうですね。
辞書によると“饒舌”の意味は
口数が多い・こと(さま)。おしゃべり。多弁。(大辞林 第三版)
だそうです。
“饒”という漢字は豊かさを表し、“舌”はことばを表します。
ことばが豊か → 話しが多い → 口数が多い ということですね。
ちなみに“饒舌”は“冗舌”とも書けます。意味はどちらも同じです。
なぜこのように二つの書き方があるかというと、それは“饒”という漢字が常用漢字(※日常で使用される漢字のこと、例:高と髙)ではないので、常用漢字が制定された1981年以降、同じ「ジョウ」という音を表す“冗”が使われるようになったからです。
饒舌(冗舌)の類語は?
辞書を引いた時、“饒舌(冗舌)”の類義語には
多弁、口まめ、おしゃべり。
などがありました。
どれもたくさん話す場面や人をイメージさせる言葉ですね。
そして私が同じ意味だと勘違いしていた“饒舌(冗舌)”と“おしゃべり”、たしかに似た意味を持つ言葉ではあるものの、“口まめ”、“おしゃべり”には、口が軽いという意味も含まれるそうです。(そうだったのか!)
そう言われてみると、学校の先生や大学の教授など、授業中ずっと喋っている=口数が多いけれども、彼らのことをおしゃべりとは言いませんよね。これは気を付けて使い分けたいところです。
饒舌(冗舌)の対義語は?
ちなみに、“饒舌(冗舌)”の反対の意味の言葉も調べてみました。
寡黙…口数の少ないこと。
口数の多いを意味する“饒舌(冗舌)”の反対なので、口数の少ないという意味の寡黙が対義語になるんですね。
そのままなのでこれは覚えやすいです。
饒舌(冗舌)の使い方の例文は?
饒舌の例文は下記のようなものがあります。
- 「ワインの話になると彼は饒舌だ」
- 「饒舌に~を語る」
ぼそぼそと話す、矢継ぎ早に話す、嬉々として話すなど、人が話している様子を表現する言葉はたくさんあります。
その中でも“饒舌”という言葉は、取り留めもなく続く言葉。淡々と、または楽しそうに話し続ける人や文章をイメージさせてくれる言葉です。
一つ目の「ワインの話になると彼は饒舌だ」という例文からは、彼にワインについて説明を求めると、様々な角度から、ワインに関する興味深い話をたくさん説明してくれている場面をイメージできます。
また、二つ目の例文は、旅行先での素晴らしい景色に感動した人が、その興奮冷めやらぬままに人々に語る様子や、小説やエッセイなどの文章の中で、表現豊かに、あらん限りの言葉を使って何かを説明する文章などを表したい時に使えますね。
言葉数が多いこと、またはその様子を表したい時に“饒舌(冗舌)”という言葉を使います。
ただし、「沈黙は金なり」という格言もあるように、口数が多ければ多いほど良いと言うわけでもありません。口数が多すぎることに対してマイナスのイメージももちろんあります。
そのことから一部では“饒舌(冗舌)”という言葉を使って皮肉めいた表現をすることもあるので、人に対してこの言葉を使う時は注意した方がいいかもしれませんね。
饒舌(冗舌)の語源は?
“饒舌”の語源はその漢字から連想できます。
饒 = (食糧が)豊か
舌 = ことば
ことばが豊か = 口数が多い = 饒舌
“饒”という漢字の中に「土」が三つも含まれていることからも、豊かな土地→(作物・食料が)豊かなことが伺えますね。
そこに“ことば”を表す“舌”という漢字を加えることで、ことばが豊か=口数が多い=饒舌という言葉が生まれました。
対して“冗舌”は1981年に常用漢字が制定された時に、“饒”の漢字の代わりに“冗”が当てはめられて一般的になった言葉です。
音は同じですが、この漢字は冗談という言葉にも使われているように、無駄がある、不必要な、という意味を持ちます。
“冗舌”も“饒舌”も同じ意味ですが、もともとの語源でもある「言葉がゆたか」というイメージを感じられるのは“饒舌”の方ですね。
また、喋りすぎな人のことを遠回しに揶揄したい時には、“饒舌”と書くより、“冗舌”と書いた方が言外のニュアンスも表現できるかもしれません。(それを知った上で、人に対して“冗舌”と言う勇気は私にはありませんが…)
饒舌(冗舌)の英語表記は?
ついでに英語で“饒舌(冗舌)”はなんて言うのかも調べてみました。
- talkative :口数の多い、話し好きな
- garrulity :おしゃべり(長々と話すイメージ)
- loquacity :(けなす意味で)おしゃべり、多弁
- volubility :(弁舌・文章が)流暢
色々な言い方があるようですが、だいたいが話し過ぎ(ネガティブ)なイメージを伴う英単語です。
端的に要件を伝えるのが好きな欧米では、なぜ、どうして、をしっかりと(口数多く)説明した後に要望を伝えるやり方はあまり好まれないのかもしれませんね。
まとめ
さて、最後に“饒舌(冗舌)”について調べたことをまとめてみます。
饒舌(冗舌)は
- 口数が多いことを表す
- 二つの書き方(漢字)が存在する
- 場合によってはマイナスのイメージにもなるので使い方に注意する
いくつかの書き方を持つ言葉は日本語にはたくさんあるけれど、それぞれの意味を考えて使い分けるのも大切だなと、漢字の奥深さを感じました。
ついつい饒舌になってしまって今回の記事は少し長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!