先日、友人から「陰険な同僚がいて、どうしたらいいのか困っている」と相談のメールが来ました。
「陰険な同僚」という言葉の響きから、嫌な目にあっているんだな、大丈夫かなと友人を心配することはできましたが、“陰険”のくわしい意味が分からず具体的なアドバイスをすることができませんでした。
そこで今回は“陰険”について調べてみたいと思います!
陰険の意味や読み方は?
ではまずは、辞書で“陰険”の意味と読みを確認したいと思います!
【陰険】―各辞書の記載は?―
- いん‐けん【陰険】
1 表面は何気なく装いながら、心の内に悪意を隠しているさま。「陰険に立ちまわる」
2 意地悪そうに見えるさま。「陰険な目つき」
(小学館『デジタル大辞泉』より) - いんけん【陰険】
・表面はよく見せかけて、裏でこっそり悪いことをするさま。陰気で、たくらみの多いさま。 「 -な人物」 「 -なやり口」
(三省堂『大辞林 第三版』より) - いん‐けん【陰険】
① 表面はよく見せかけて、心の内には悪意を隠しているさま。かげでよくないことをするような性質であるさま。腹黒いさま。
② 暗くてぶあいそうに見えるさま。
(小学館『精選版 日本国語大辞典』より) - 陰険【いんけん】
【1】表面はよく見せかけて、陰で悪だくみをするようす。「―な手段」
【2】暗く意地悪そうなようす。「―な顔つき」
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』より) - いんけん【陰険】
①表面はよく見せかけて、陰でこっそりあくどいことをする様子。
「やり方が―だ」「―な手を用いる」
②見るからに意地悪そう(邪悪)な感じを与える様子。
「―な目つき」
(三省堂『新明解国語辞典 第七版』より)
大辞林は意味の項目が一つですが大きな意味ではほかの辞書とずれがないので、これはほかの辞書の①②の意味をまとめて一つの項目としていると考えられそうですね。
それでは、簡単に“険悪”の意味などをまとめてみたいと思います!
【陰険】の意味と読み方のまとめ
<読み方>いんけん
<意味>
①表面はよく見せかけて、陰で悪いことをするさま
②暗くて、意地悪な印象をあたえる様子
・・・相当嫌な感じの言葉であることは確かですね。
陰険な人の特徴は?
続いて「陰険な人」といった場合、どんな人なのかを考えてみたいと思います。
上の意味調べを参考にすると、意味から見て、2つのパターンが考えられますね。
①表面はよく見せかけて、陰で悪いことをする人
②暗くて、意地悪な印象の人
と、単純に考えられますね。
①と②は似ていますが、②の場合は「実際に悪いことをしているとは限らない」「(実際はどうだかわからないが)そういう雰囲気の人」というところがポイントですね。
陰険の正しい使い方の例文は?
それでは、“陰険”は具体的にはどのように使えばよいのでしょうか。
辞書の例文を見ていきましょう!
【“陰険”の使い方-各辞書の例文-】
・「陰険に立ちまわる」
・「陰険な目つき」
(小学館『デジタル大辞泉』より)
・「 -な人物」
・「 -なやり口」
(三省堂『大辞林 第三版』より)
・「―な手段」
・「―な顔つき」
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』より)
・「やり方が―だ」
・「―な手を用いる」
・「―な目つき」
(三省堂『新明解国語辞典 第七版』より)
「やり口」「やり方」「手を用いる」などのような【手段】や「顔つき」「目つき」のような【人相・人物】に対して使われることが多いのが印象的ですね。
陰険の類語は?陰湿との違いは?
次に類語を確認してみたいと思います!
角川学芸出版『類語国語辞典』を参考に見ていきます。
この辞書の中で、“陰険”は〔心がねじけて悪い性質〕のグループに分類されています。ちなみに【ねじける】は「性質がひねくれる」という意味だそうです。
このグループには
- 腹汚い(はらぎたない)・・・根性がよくない
- 腹黒い・・・心がねじけていて悪だくみをする。意地が悪い
- 邪悪・・・心がねじけていて悪いこと
- 姦悪(かんあく)・・・心がねじけて悪いこと
- 姦佞(かんねい)・・・心がねじけていて悪賢く人にへつらうこと。そのひと
- 悪辣(あくらつ)・・・非常にたちが悪いこと。やり方がひどいこと
類語にはなじみのない難しい表現も出てきました。
性格の悪さを表す表現がこんなにたくさんあるなんて、あらためてびっくりしました!
また、似て感じられる表現に【陰湿(いんしつ)】という表現がありますね。
【陰湿】の意味も簡単に見てみたいと思います。
【陰湿】の意味
日かげになってうす暗く、じめじめとしていること。陰気でしめっぽいさま。
(小学館『精選版 日本国語大辞典』より)
暗くてじめじめしていること。陰気で晴れ晴れしないこと。また、そのさま。
「陰湿な土地」「陰湿ないたずら」
(小学館『デジタル大辞泉』より)
① 日が当たらず、暗くてじめじめしている・こと(さま)。 「 -な土地」
② 人の性格や事柄が陰気で、晴れ晴れした気持ちにさせないさま。 「 -ないじめ」
(三省堂『大辞林 第三版』より)
とこのように、【陰湿】は“陰険”と比べると「表に見せず裏でやる」というニュアンスがないことがわかりますね!
陰険の英語表記は?
それでは次に、“陰険”の英語表現を「研究社 新和英中辞典」で確認してみましょう!
【陰険な】
- 〔sly〕ずるい、悪賢い、陰険な、いたずらな
- 〔wily〕こうかつな、陰険な、ずるい
- 〔treacherous〕裏切りをする、そむく、不忠な、不実な
- 〔underhand〕こそこそした
【sly】はファッションブランドの名前としてなじみがある人もいるかもしれないですね。【underhand】は〔下〕+〔手〕で「下手投げ」という意味もあるそうです。
まとめ
それでは今回のポイントのまとめです!
- “陰険”の読み方は「いんけん」
- “陰険”は
①表面はよく見せかけて、陰で悪いことをするさま
②暗くて、意地悪な印象をあたえる様子
という意味 - “陰険”は【手段】や【人相・人物】に対して使われることが多い
それでは最後までお読みいただきありがとうございました!