”辺りは人いきれに包まれた”
という小説の中の一文を読んで、人いきれという単語が気になりました。
日常生活は聞いたことが無い言葉ですが、強いインパクトを感じる言葉でしたので意味や用法について調べてみました。
調べてみると和歌の季語としても使われるとてもユニークな言葉だということが分かりました。
人いきれの意味と使い方は?
まずは辞書による意味を調べてみました。
人が多く集まった場合,体から出る熱気やにおいなどによってむんむんすること。
(大辞林より引用)
漢字で”人熱れ”と書くこともできるようです。
むんむんするといっているのですから、活気があるというようなポジティブなイメージではなく、人があつまることによっての熱さや汗臭さなど、ネガティブなイメージを表す言葉として使われるようですね。
人いきれ、草いきれ。の違いもチェック!
人いきれと似た言葉に”草いきれ”という言葉があります。
こちらの意味も調べてみました。
夏の強い日ざしをうけて、草むらから立ちのぼる、むっとする熱気。
(大辞林より引用)
こちらも単純に人と草が違うだけで、人いきれと同じような意味ですね。
昔の人にとって、日射が強く、熱くなった草むら(草いきれ)を歩くのは苦痛だったようで、草いきれもやはりネガティブなイメージを持った言葉のようです。
人いきれは夏の季語として使える!
調べたところ人いきれは夏の季語としても使えることが分かりました。
詰場所や退かぬ暑さの人いきれ 久保田万太郎
この俳句は久保田万太郎という方の作品で、大賞から昭和にかけて活躍した作家で、後に文化勲章を取るほど著名な方になり。
その方の作品に”人いきれ”は季語として使われていました。
ただ季語というのは、明確な決まりがあるわけではないようです。
一応季語を集めた歳時記(きごさい)と呼ばれる本はかなり昔からあるようですが、近代俳句を確立した正岡子規は「歳時記よりも実情を優先せよ」と言っていたようです。
実情に即していればどんな言葉も季語になりえるということですが、もちろん実際にはどんな言葉でも季語になることはなく、ある程度作家たちの間で共通に認められたことばでないといけないと思います。
その意味で、久保田万太郎という著名な作家の作品にも季語として使われている”人いきれ”という単語は十分に季語として認知されていると言えるでしょう。
人いきれの例文や使い方は?
人いきれの例文を集めました。
どれもネガティブな言葉として使われていることが分かると思います。
- 大会の会場は人いきれでムンムンしていました。
- 人いきれの臭氣でムンとした。
- 人いきれで咽せ返る。
- 人いきれや煙草のにおいを胸苦しい位に感じ出した。
人いきれの類語は?
人いきれの類語を調べました。
- 草いきれ
- 熱気
- 熱せられた空気
- ムッとする暑さ
人いきれの発音(イントネーション)は?
”人いきれ”という言葉の発音を辞書で調べてみました。
すると、二通りの読み方があるようです。
①:_――――(ヒが低く,トイキレが高い)
②:__―__(ヒトキレが低く,イが高い)
①の方がより標準的なアクセントになります。
人いきれの語源は?
最後に、”人いきれ”の語源について調べてみました。
人いきれの「いきれ」は先ほども述べましたが、「熱れ」と書き、熱気でむっとする意味の動詞「いきれる(熱れる)」の名詞形で、蒸されるような熱気を意味します。
「いきれ」の語源は分かりませんでしたが、「熱くなる」「燃え立つ」を意味する朝鮮語「ikil」と同じ語源ではないかという説が有力のようです。
最後までお読みいただきありがとうございました!