先日、本を読んでいたら、こんな文章を見つけました。
「塩鮭をジッと見ていると、なんだか哀れで涙が滲んでくる。(略)憤懣やるかたないといったふうに突き出された下くちびる。」(東海林 さだお『タコの丸かじり』より)
鮭の下くちびるが“憤懣やるかたない”ような感じ?どんな感じなのか全然わからない!っていうか、そもそもどう読むの?・・・ということで、“憤懣”について調べてみたいと思います!
憤懣の意味や読み方は?
なにがともあれ、まずは“憤懣”の漢字をチェックしたいと思います!
【憤】フン
①いきどおる
(1)いかる。うらむ。
(2)ふるいたつ。
(3)もだえくるしむ。
②いきどおり
③みだれる
④みちる。つもる。
⑤ふきでる。あらわれる。
【憤懣】ふんもん/ふんまん=【憤悶】ふんもん
(角川書店『角川新字源』より)
色々な意味がありますね!ただ、どれも「不満があって、体をよじりながらブーブー言う」みたいなニュアンスが共通してるのかな、と思いました。
そして、“憤懣”は「ふんもん」または「ふんまん」と読むのですね!
また辞書には、“憤”は心を表す部首である【忄】(りっしんべん)と吹き出すという意味を持つ【賁】とから成り立っている漢字であることも書いてありました。
【懣】モン/マン
①もだえる。いきどおる。(【悶】におなじ)
②「懣懣(もんもん)」はもだえわずらうさま。
(角川書店『角川新字源』より)
【懣】は見慣れない漢字でしたが、【悶】と同じ意味を持つと考えると、ちょっとわかりやすいですよね。
またこうやってみると、【憤】【懣】どちらも近い意味を持っていて、“憤懣”は、同じ意味の漢字を重ねた表現であることがわかりました!
続いて“憤懣”の意味を調べたいと思います。
・・・と調べ始めて気付いたのが、「ふんまん」と読む方が「ふんもん」よりも一般的、ということです。
辞書を「ふんまん」でひくと“憤懣”が出てきますが、「ふんもん」でひくと“憤悶”の漢字の方がでてきます。
ですので、“憤懣”に【懣】の漢字が当てられている場合は、「ふんまん」と読む方が自然ということが分かりました!
では、話を戻して、意味調べをしたいと思います。
【憤懣・忿懣】
- いきどおりもだえること。腹が立っていらいらすること。
(三省堂『大辞林 第三版』) - 怒りが発散できずいらいらすること。腹が立ってどうにもがまんできない気持ち。
(小学館『デジタル大辞泉』)
- 腹が立って、どうしようもないこと。いきどおってもだえること。
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版 』)
と各辞書にありました!
つまり、“憤懣”とは「腹が立って腹が立て仕方がないこと」なのですね!
憤懣やるかたないの意味は?
ちなみに、よく聞く、“憤懣やるかたない”とはどういう意味なのでしょうか?
辞書を見てみると、【やるかたない】には「心のわだかまりを晴らす方法がない。」(小学館『デジタル大辞泉』より)という意味があるみたいでした。
続いて、“憤懣やるかたない”で調べてみると・・・
とありました。
つまり
【憤懣】+【やるかたない】
⇒「腹が立ってしかたがない」+「心を晴らせない」
⇒「腹が立ってどうしょうもないのに気分が晴れない!」
ということなのですね。
いやぁ、結構つらい状態です・・・
憤懣の正しい使い方の例文は?
では、“憤懣”は実際にはどのように使えばいいのでしょうか?
辞書などの例文を見ていきたいと思います!
- 「 -やる方がない」 「 -する如く肩を怒らし/社会百面相 魯庵」(三省堂『大辞林 第三版』)
- 「―やるかたない」「―をぶつける」(小学館『デジタル大辞泉』)
- 「―やるかたない」(三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
- 「憤懣にはけ口を与える」「憤懣やるかたなく苛立ってるような叫び」
(三省堂『てにをは連想表現辞典』より)
などが見つかりました。
圧倒的に、「憤懣+やるかたない」の使い方が多いですね!
憤懣の類語は?
続いて、類語を確認していきたいと思います!
- 憤怒(ふんぬ/ふんど)・・・大いに怒ること。
- 腸(はらわた)が煮えくり返る・・・我慢ならないほどに腹が立つ。
- 憤る・・・恨み怒る。怒りがわき上がる。
- 痛憤(つうふん)・・・大いに憤慨すること。
(角川学芸出版『類語国語辞典』より)
などが、あげられます。
ちなみに、“憤懣”と似た響きの言葉に「噴飯(ふんぱん)」もありますが、こちらの「噴」は吹き出すの意味で、「噴飯」は「おかしくてたまらない」という意味合いですので、間違えないようにしたいですね!
憤懣の英語表記は?
最後に、憤懣は英語ではどう表現すればよいのか確認していきたいと思います!
- anger・・・怒り, 激怒, 腹立ち, 鬱憤, 立腹
- resentment・・・鬱憤, 激怒, 憤懣, 忿怒 (以上2単語 研究社 『新和英中辞典』より)
- indignation・・・憤慨, 激怒 (『斎藤和英大辞典』より)
などがありました。
【anger】はとても身近なことばですよね。
ただ、どの英単語も日本語の“憤懣”と全く同じようなニュアンスで使えるわけではないので、意味をよく確かめて適切に使っていきたいですね!
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!