先日、クリムトの作品集を眺めていたところ、「瀟洒な装飾で飾られた肖像画の世界」(東京美術『クリムト作品集』より)という章がありました。
その時はとりあえず流して読んだのですが、“瀟洒”は何て読むのか、どんな意味なのか、まったく分かりません・・・!
ということで、今回は“瀟洒”について調べてみたいと思います!
瀟洒の意味や読み方は?
ひとまず、読みを確認したいと思います。
【瀟】ショウ
①「瀟水(しょうすい)」は、川の名。湖南省にみなもとを発し、湘(しょう)水に注ぐ。
②きよい。清く深い。
〔瀟洒〕しょう(せう)しゃ…さっぱりして清らか。すっきりしてあかぬけしたさま。
【洒】①セイ/②セン/③シャ
①あらう。あらいきよめる。すすぐ。名誉を回復する。
②つつしむさま。
③そそぐ。水をかけてあらう。
(以上 角川書店『角川新字源』より)
このように、“瀟洒”は【しょうしゃ】と読むのですね!
正直、全く聞いたことのない読み方です。
続いて、意味を確かめたいと思います。
【瀟洒】
・さっぱりして気がきいているさま。あかぬけているさま。(三省堂『大辞林 第三版』より)
・すっきりとあか抜けしているさま。俗っぽくなくしゃれているさま。(小学館『デジタル大辞泉』)
・すっきりしてあかぬけしているようす。
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』)
・すっきりしているさま。飾り気がなくさっぱりした様子(角川学芸出版『類語国語辞典』)
と、このようにどの辞書でも、“瀟洒”を「さっぱりとしてあか抜けているさま」と説明していました。
クリムトの私のイメージは、強い色づかいやモザイク模様でこってりした印象があったので、“瀟洒”が「さっぱりしている」という意味だとはかなり意外でした!
瀟洒の語源は?
では、“瀟洒”はどのようにつくられた表現なのでしょうか。
先ほど、読みを確かめる際にしらべたとおり、
【瀟】ショウ …きよい。清く深い。
【洒】①セイ/②セン/③シャ
①あらう。あらいきよめる。すすぐ。名誉を回復する。
②つつしむさま。
③そそぐ。水をかけてあらう。
(以上 角川書店『角川新字源』より)
というそれぞれの漢字の意味がありました。
また、“瀟洒”という表現では“洒”は【シャ】と読むため、ここでの“洒”は③の意味だと考えることができますよね。
そこから、
【瀟…きよい】+【洒…水をかけてあらう】
⇒【瀟洒】さっぱりとしてあか抜けているさま
という意味が出来てきたのだと考えられますね!
瀟洒の正しい使い方の例文は?
それでは、具体的にはどのように“瀟洒”という表現を使えばいいのでしょうか?
辞書を引いてみると、
- 「 -な住宅」 「 -な美人」(三省堂『大辞林 第三版』)
- 「―な身なり」「―な洋館」(小学館『デジタル大辞泉』)
- 「―な洋館」(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』)
- 「―な服装」「―な洋館」(角川学芸出版『類語国語辞典』)
- 「―な建物」(三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
と見事に、【建造物】もしくは【人の外見】の二種類の例文が示されていました。
このことから、“瀟洒”ということばは、内面や心情に対してではなく、“見た目”に対して使うのが自然だといえるようですね!
瀟洒の類語は?
では次に、“瀟洒”に似た表現にはどのようなものがあるのか調べていきたいと思います!
三省堂『新明解国語辞典 第七版』によると、同じグループの中には、
- 小綺麗(こぎれい)…見た目にさっぱりと整っていて、感じがよいさま
- 小ざっぱり…見た目に清潔でさっぱりとしたさま
- 清楚(せいそ)…すっきりとして(飾らずに)清らかなさま
- 粋(いき)…さっぱりしていていやみがないさま。洗練された色気が感じられるさま。
などが上がられていました。
この他にも
- スタイリッシュ(情報通信研究機構「日本語ワードネット」より)
も“瀟洒”の類語と言えるようです。
中でも、【清楚】は“すっきりとしている”“飾り気がない”という意味で“瀟洒”と共通点があり、近い意味合いの言葉といえますね!
ただ、【清楚】は人の見た目には使えるものの、建物に対して使うのは不自然なので、使い分けに気を付けましょう!
瀟洒の対義語は?
では逆に、“瀟洒”と反対の意味を持つのはどんな表現なのでしょうか。
- 野暮(やぼ)…洗練されていないこと。その人。⇔粋(いき)
- むさくるしい…すっきりせず汚らしい
- 不格好(ぶかっこう)…姿・形がよくないこと。見ばえのしないこと。
(以上 三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
があげられます。また、【あか抜けている】の反対ということは単純に
- あか抜けていない
も反対語と言えると思います。
さらに、「美しいもの」ではあっても、【さっぱりとしている】わけではない、という意味合いで、“瀟洒”と反対といえる表現に
- ・華美(かび)…派手で美しいこと
- ・こってり…しつこいほどに濃いさま
(以上 三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
もあげられますね!
瀟洒の英語表記は?
最後に、“瀟洒”の英語表現を確認したいと思います。
- elegant
- smart
- neat…きちんとした、こぎれいな、こざっぱりした
- stylish
- chic
(以上 研究社 『新和英中辞典』より)
と、【エレガント】【スマート】【スタイリッシュ】【シック】というように、一般的によく使われる表現が“瀟洒”の英訳として使われることがわかりました!
“瀟洒”よりむしろ、これらの言葉の方が、イメージがわきやすい気もしますね!
私自身は“瀟洒”ということばには、デコレーションされたショートケーキのようなイメージを持ちましたが、実際はむしろ、シンプルなガトーショコラのようなイメージを持つ表現だと知り、驚きました!
それでは最後までお読みいただきありがとうございました!