先日、昔の暮らしに関する資料を読んでいたところ、「住んでいた下宿は安普請で、トラックが通るたびに窓がガタガタいった」という文章がありました。
ここにある、”安普請“という表現、聞いたことはありますが、ハッキリと意味を答えることができません。
これを機に調べて見たいと思います!
安普請の意味や読み方は?
まずは“安普請”の読み方ですが、辞書でしらべると【やす‐ぶしん】(岩波書店『広辞苑 第六版』より)とありました。つまり、安→やす 普請→ぶしん と読むということですね。
では、”安普請“はどんな意味なのでしょうか?
【安普請】(やす‐ぶしん)
- 安い費用で、また粗末な材料で家屋を建てること。また、その家。(三省堂『大辞林 第三版』)
- 安い費用で家を建てること。また、そういう粗雑なつくりの家。(小学館『デジタル大辞泉』)
- 安い費用で家を建てること。また、そうして建てた家。(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』)
- 安い費用で家屋などを建てること。また、そうして建てたあまり上等でない建築物。(岩波書店『広辞苑 第六版』)
と、どの辞書にも共通して、「安い費用で家を建てること」「安い費用で建てた家」という意味が書かれていましたので、この意味をおさえたいと思います!
安普請の正しい使い方の例文は?
では、”安普請“は具体的にはどのように使えばよいのでしょうか?
- 欄間も、壁も、襖も、古く、どっしりして、安普請では無い。(太宰治『新樹の言葉』より)
- ここも、急ごしらえの安普請である。落ちつくに堪えない部屋に、俗悪な絵だの花だのを、無智に飾りたててある。(吉川英治『宮本武蔵』より)
- 軒に松家やと云う電燈の出た(略)安普請らしい二階家である(芥川龍之介『葱』より)
と、文学作品の中で使われている例が出てきました。
現代では日常会話の中で使われる言葉ではないですね。
また、“安普請”は家などの小規模な建築物に使われる言葉で、
〇安普請の家に住む
とは言いますが
×安普請の服を着る
という風には使えない表現なので間違えないようにましょう!
安普請の反対語は?
ちなみに、“安普請”の反対語には、“大名普請(だいみょうぶしん)”という表現があります。
【大名普請】(だいみょう‐ぶしん)
- 費用を惜しまないで、ぜいたくなつくりの家を建てること。(小学館『デジタル大辞泉』)
- ぜいたくに金を使った建築や工事。(三省堂『大辞林 第三版』)
- 費用を惜しまないぜいたくな普請。(岩波書店『広辞苑 第六版』
「大名=贅沢」というイメージにぴったりの表現ですね。
日常生活では安普請以上に使う場面はないかもしれませんが、”安普請“と合わせて覚えておくと、役に立つことがあるかもしれません。
安普請の同義語は?
“安普請”とぴったり同じ!という意味の同義語はなかなかありませんありませんでした。
ただ、意味の一部に重なりのある表現としては
- 【掘っ建て小屋】ほったてごや・・・柱を直接土中に埋めて建てた、急造の粗末な建物。
- 【梲小屋】うだつごや・・・非常に粗末な家。掘っ建て小屋。おだつ小屋。(以上三省堂『大辞林 第三版』)
- 【やっつけ仕事】やっつけしごと・・・間に合わせのいい加減な仕事。その場しのぎの仕事。(『実用日本語辞典』)
といった表現があります。
とはいえやはり、”安普請“とはニュアンスが異なりますので、しっかりと使い分けれるとカッコいいですね!
安普請の語源は?
では、“安普請”はどんな語源なのでしょうか?
“安普請”は一番初めに見たように、【やす‐ぶしん】(岩波書店『広辞苑 第六版』より)というように、【安】+【普請】でできている表現です。
【安】はそのままの意味ですが、【普請】はあまり見かけない言葉ですので、意味を確認したいと思います。
【普請】ふしん
土木工事,建築工事を指す用語。元来は仏教用語,とくに禅宗で用いられた語(後略)(平凡社『世界大百科事典 第2版』より)
- 家屋を建てたり修理したりすること。建築。また、土木工事。
- 築城の際の土木工事をいう語。
- 禅宗で、寺院の修行者が力を合わせて作業に従事すること。
(三省堂『大辞林 第三版』より)
と、“普請”は単独では、「ぶしん」ではなく「ふしん」と読みます。
そして、ざっくりというと「何かを建てる、土木工事をする」という意味になります
つまり「安い」+「工事/建造物」→“安普請”という表現なのですね。
安普請の英語表記は?
では最後に“安普請”を英語表記をチェックします!
- a jerry-built house/a cheaply built house・・・安普請の家
- jerry-build a house ・・・家を安普請で建てる(以上2例 プログレッシブ和英中辞典第3版より)
といった例が出たきました。
【cheaply】の元の形は【cheap】=「チープ」ですので、わかりやすいですね!
【jerry】には「材料や腕が劣る」「安普請の」といった意味があるそうです。
ただ、【jerry】は俗語と辞書に載っていましたので、使う場面はしっかり見極めた方がよさそうです。
色々調べてみて、英語では“安普請”に代わる表現がなかなか見つからないことがとても印象的でした。
日本語の独自性のある“安普請”という表現、“大名普請”という表現と共に、覚えておきたいですね!
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!