先日、「ドタンバでプロジェクトひっくり返された・・・!」なーんて、先輩が怒り狂ってたんですが、ん?“ドタンバ”って、ぎりぎりのとこ、って意味であってたっけな?なんて、ちょっと気になったので、“ドタンバ”について調べてみました!
土壇場の由来は?
“ドタンバ”、漢字で書くと”土壇場“なんですね。
耳なじみのある言葉ではあるけれど、自分で漢字で書けって言われたら、結構難しいですよね。
まず、“土壇場”の意味を辞書で調べてみると
- 助かる見込みが万に一つもない場合。絶体絶命。
- 物事が決定しようとする、最後の瞬間(場面)。
(三省堂 『新明解国語辞典 第七版』より) - 近世、首切りの刑を行うために築いた土の壇。土壇(どだん)。
- 決断をせまられる、最後の場面。進退きわまった状態。
(小学館『デジタル大辞泉』より)
とありました。
また、三省堂 『新明解国語辞典 第七版』では〔首切りの刑場の意〕との解説もありました。
つまり、古くは、罪人を処刑する場所が”土壇場“と呼ばれていたのですね。
知らずに使っていたけれど、なんだか怖い・・・・!
さらに、インターネットで調べたところ、江戸時代より以前は、ただ単に、土を盛り上げて他より高くした土地のことを“土壇場”と呼んでいたけれど、江戸時代、その”土壇場“で処刑が行われるようになったことから、処刑場自体が、”土壇場“と呼ばれるようになり、そこから現在の意味に転じてきた、ということがわかりました。
土壇場の使い方の例文は?
さてさて、意外な由来に驚きましたが、それはさておき、現代では”土壇場”という言葉はどのように使うのが正しいのでしょうか?
- 「土壇場に立たされる」(三省堂 『新明解国語辞典 第七版』)
- 「土壇場で話がひっくりかえる」「土壇場に立たされる」(小学館『デジタル大辞泉』)
- 「土壇場で力を発揮する」「土壇場に来ておじけづく」(三省堂『てにをは連想表現辞典』より)
などの例文が辞書に載っていました。
「土壇場に立たされる」という表現は、私自身はあまり馴染みはなかったのですが、複数の辞書で紹介されていたことから考えると、一般的な使い方なのでしょうね。
それに、”土壇場“+【立つ】というこの表現は、古い時代の“土壇場”の意味合いをよく残した使われ方だなぁと感じました。
土壇場の類語は?
“土壇場”の類語には
- ギリギリ ・ 直前 ・ 一歩手前 ・ あと一歩のところ
- 土俵際 ・瀬戸際
(国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)『日本語ワードネット0.9版』より)
などがあります。
また、類語は、上の①のグループの【ほんの寸前のところ】という意味合いと、②の【進退きわまった場面】という意味合いの二つの種類に分けることができます。
ただ、実際使うときは①と②を意識的に区別して使うことはあまりないし、どちらの意味合いも含むニュアンスで使うことが多い気もしますね。
土壇場と独壇場の関係は?
土壇場と似た文字の言葉に、”独壇場”という言葉がありますね。
うっかりすると、独壇場の事をドタンバと読んでしまうこともありそうです。
こちらの方も気になったので意味を調べてみました。
その人ひとりだけで、思いのとおりの振る舞いができるような場面・分野。ひとり舞台。 〔「擅」を「壇」と誤り、「ひとり舞台」の意から「独壇場どくだんじよう」の語が生じた〕(三省堂 『大辞林』)
もともと壇場は、少し高く盛り上げて作られた場所のことですから、高い場所を独占しているのが独壇場ということなのですね。
土壇場の方は、土で作った壇場(少し高い場所)が、処刑で使われた為に、先ほど説明したような絶体絶命という意味になっただけですので、土壇場の使われ方が少し例外的なようですね。
ドタキャンとの関係!ドタキャンは土壇場キャンセルの略?
”土壇場“よりも、もしかすると使うことの多い言葉に”ドタキャン“がありますよね。
この”ドタキャン“という言葉を辞書で調べてみました。
- 土壇場になって予定をキャンセルすることを省略していう語。(三省堂 『大辞林』)
- 「どた」は土壇場、「キャン」はキャンセルの略。(岩波書店『広辞苑第六版』)
見ての通りやはり、”ドタキャン”は”土壇場キャンセル”の略でした。
また、“ドタキャン”は1990年代から使われ始めたとされる、比較的新しい言葉だそうです。
ちなみに、ドタキャンのように、【日本語】+【外来語】⇒【新しい省略語】というパターンで作られた言葉には
- 【育児】+【メン(男性)】⇒【イクメン】
- 【推し】+【メンバー】⇒【推しメン】
などごく最近作られたものもあります。
これからも時代に合わせた言葉がどんどん作られていくのかもしれませんね。
土壇場は英語でなんていう?
類語のところでも触れたように、“土壇場”は①【ほんの寸前のところ】という意味合いと、②【進退きわまった場面】という二つの意味に大きく分けることができます。
ですので、それぞれの意味に対応する英訳を見ていきたいと思います!
①ほんの寸前のところ
- at the last moment (研究社 『新和英中辞典』)
- at the eleventh hour (小学館 『プログレッシブ和英中辞典 第3版』)
この【eleventh】は直訳すると【11番目の】の意味ですが、【eleventh hour】は、聖書「マタイ伝」に由来する表現で、【ギリギリ】という意味があるのだそうです。
②進退きわまった場面
- have one’s back against the wall (研究社 『新和英中辞典』)
- be driven [brought] to bay (同上)
【wall】は壁や塀、【bay】は湾や入り江という意味なので、日本語に直訳すると「壁際まで追いつめられる」「入り江まで追いつめられる」といったところでしょうか。
土壇場の類語に【瀬戸際】がありましたが、この”瀬戸“とは「相対した陸地の間の、特に幅の狭い海峡。」(小学館『デジタル大辞泉』より)という意味ですので、be driven [brought] to bayとほぼ同じ言い回しなのが、とても興味深いですね!
では、最後までお読みいただきありがとうございました!