先日、ネットを見ていたら、「卒業式さながらの演出で観客を魅了した」というニュースがありました。
“さながら”って見たり聞いたりすることはありますが、なかなか自分では使わない表現です。
よく考えてみれば、なんとなくしか意味が分かっていないので、これを機に、“さながら”について調べてみたいと思います!
さながらの意味は?
はじめに、“さながら”の意味を確認してみたいと思います!
まずは、各辞書を見ていきます。
辞書の記載を紹介した後、自分なりに意味をまとめてみたいと思います!
【さながら】各辞書の意味
(例文などから古典的な使い方をする際の意味と判断したものは、字を小さくしてあります。)
① 二つの事物・状態が似ているさまにいう。
㋐ (下に「…のような」「…のごとく」などを伴って)他になぞらえる意で表す。ちょうど。まるで。
㋑ (名詞の下に付いて)本物によく似ているさま。…そのまま。…そっくり。
② まったく。ひたすら。
③ そのまま。そのままの状態で。
④ そっくり全部。のこらず。
(三省堂『大辞林 第三版』より)
〔一〕
1 非常によく似ているさま。まるで。そっくり。
2 そのまま。もとのまま。
3 すべて。全部。
〔二〕
そうは言うものの。かと言ってやはり。
(小学館『デジタル大辞泉』より)
【1】まるで。ちょうど。
【2】〔古〕そのまま。そっくり全部。
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』より)
①当面する事態が、よく知られる事態の様子にそっくりそのままあてはまるととらえられる様子。
②そっくりそのままに見立てられる意を表す。
(三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
ちなみに、“さながら”は漢字にすると「宛ら」と書くそうです。
では、自分なりに意味をまとめてみたいと思います!
<現代的な使い方での意味>
①(あるものと)そっくりで、まるでそれのようだ
②まるでそれのように
<古典的な使い方での意味>
①ひたすら
②そのまま
③全部
④そうは言っても
さながらの正しい使い方の例文は?
では、“さながら”は具体的にはどのように使われるのでしょうか?
ここでは現在の使われ方に絞って、みていきたいと思います。
【各辞書の例文】
(※丸付き数字は、上のどちらの意味で使われているかを表しています。)
①「草原は-海のようだった」
②「本番-に行う」
(三省堂『大辞林 第三版』より)
①「宛ら滝のような雨」
①「地獄絵宛らのすさまじさ」
(小学館『デジタル大辞泉』より)
①「―絵のようだ」
②「実戦―」
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』より)
①「美美しい行列は-王朝絵巻の一シーンであった」
①「戦場は-地獄絵のようであった」
②「実践(本番)―の訓練」
②「太古-の森」
(三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
辞書に載っている例文を見ていくと、①の意味では、「絵に例える」のが代表的な使われかたで、②の意味では、訓練や練習に対して使われることが多いということが分かります!
さながらの語源は?
次に、“さながら”はどのようにできてきた表現なのか、少し調べてみたいと思います!
小学館『デジタル大辞泉』には
《副詞「さ」+接続助詞「ながら」から》
という説明があります。
とはいえ、これだけだとよくわかりませんので、もう少し詳しく見ていきましょう。
まず、副詞の「さ」には
≪すでにある事物・状態などをうけて、それを指示する語。そのように。そう≫
という意味があります。
私たちが普段「そういう意味ね~」などと使う、「そう」にあたることばなのですね。
また、接続助詞の「ながら」には
1二つの動作・状態が並行して行われる意を表す。
2内容の矛盾する二つの事柄をつなぐ意を表す。…にもかかわらず。…ではあるが。
3ある状態のままにある意を表す。…のまま。…のとおり。
4そろってそのまま、同じ状態にある意を表す。全部。…とも。それごと。
(以上 小学館『デジタル大辞泉』より)
といった意味がありますが、“さながら”の「ながら」は3の≪~のとおり≫の使われ方に当てはまると考えられますね。
成り立ちについてまとめると・・・
・《副詞「さ」+接続助詞「ながら」》
→「その」+「とおり」
→まるでそのように/そのような
となります。
さながらの類語は?
次に、“さながら”はどのような言葉と言い換えられるのか、調べてみたいと思います!
- みたいに
- のように
- あたかも
- たとえるなら
- 言うなら
- 言わば
- まるで
- まさに
(情報通信研究機構「日本語WordNet」より)
といった、想像以上に色々な表現があげられていました。
日本のお笑いには「たとえ芸」などと呼ばれる芸風があったりしますし、日本語はものを何かに例える、比喩表現が豊かな言語だということがあらためて分かりますね!
さながらの英語表記は?
では最後に、“さながら”を英語ではどのように表現すればよいのかを確認したいと思います!
辞書で調べると
・as if・・・まるで~であるかのように、まるで~するかのように
・as though・・・~とでも言うよう、丁度、まるで
(『斎藤和英大辞典』より)
といった表現がありました。
また、日本語の例の中にもあった「絵のよう」という表現は
・It is just like a picture.・・・さながら一幅の絵である
(『斎藤和英大辞典』より)
・The scene looks just like a picture scroll.・・・その光景はさながら一幅の絵巻物である
(『研究社 新和英中辞典』より)
といった英語で表現されるそうです!
それでは最後に今回調べたことのポイントをまとめてみます!
・“さながら”は「まるでそれのようだ/まるでそれのように」の意味
・副詞「さ」+接続助詞「ながら」→「その」+「とおり」で、現在の意味となった
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!