最近、ゲームをしていたら、“怜悧狡猾”という熟語に出会いました。
“狡猾”の方は「ずる賢い」という意味だなぁ、と何となく分かるのですが、“怜悧”のほうは正直、聞き覚えがなく、意味が気になりました。
ということで、“怜悧”について色々たところ、あまり一般的ではないですが太宰治さんの小説にも出てくるような昔からある文学表現であることや、人間だけに使う言葉で方法等には使えないなど正しい使い方を知ることができました!
怜悧の意味や読み方は?
まずは、どう読めばいいのか 角川書店『角川新字源』で確認していきたいと思います!
【怜】①レイ/②レン
意味:①さとい。かしこい。
〈怜質〉れいしつ:かしこい生まれつき。
〈怜悧〉れいり:さとい。さかしい。りこう。
②あわれむ。【憐】に同じ
とありましたので、“怜悧”は【れいり】と読むのですね!
次に、“怜悧”の意味を確認したいと思います。
怜悧の意味
- 頭のはたらきがすぐれていて、かしこい・こと(さま)。聡明。 (三省堂『大辞林 第三版』)
- 賢いこと。利口なこと。また、そのさま。利発。(小学館『デジタル大辞泉』)
- かしこいこと。(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』)
- 頭の回転が早く、判断力に優れていること。また、その様子。(三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
と、複数の辞書からざっくりとまとめると、“怜悧”は「賢いこと」という意味だとわかりますね!
怜悧の正しい使い方の例文は?
意味は分かりましたが、実際にはあまり使わない“怜悧”という表現…。
具体的にはどのように使われることばなのでしょうか?
怜悧の例文
- 「 -な頭脳」(三省堂『大辞林 第三版』)
- 「―な若者」(小学館『デジタル大辞泉』)
- 「きわめて―な子供」「―に見える」(角川学芸出版『類語国語辞典』)
といった例文が辞書には載っていました。
また、文学作品の中では
文学作品中に見られる怜悧を使った例文
- 「末造は最初は驚いたが、怜悧な頭で色々に考えて見た。」(森鴎外『雁』)
- 「怜悧な少年は奇遇を喜び、薪をくべ、粟飯ながら夕餉をもてなす。」(吉川英治『随筆 宮本武蔵』)
- 「器用であり、怜悧であったかを語らないものとてはないのでした。」(谷崎潤一郎『痴人の愛』)
というように使われていました。
自分からはなかなか使うことのないことばかもしれませんが、知っておくと、作品をより深く理解する手助けになるなと感じました!
怜悧の類語は?
では、“怜悧”にはどのような類語があるのでしょうか?
角川学芸出版『類語国語辞典』を見てみると“怜悧”は【賢明】(賢くて道理に明るいこと)のグループに入っています。また、このグループの中には
怜悧の類語
- 賢い
- 知的
- 利口
- 理知的…理性と知恵がよく働くさま
- 聡い(さとい)…悟るのが早い。賢い
- 聡明…物事にさとく道理にあかるいこと
- 利発…賢いこと
といった表現が分類されています。
そして、この辞書の中に、これらのことばの使い分けについての注釈があったので、引用したいと思います。
「利口」「賢い」は、人についても方法についても使われるが、「怜悧」は、人についてだけで方法についてはいわない。「賢明」も、「賢明な人」というよりは「賢明な処置」「賢明な道」など方法についていうことが多い。「聡明」は、単に「かしこい」というだけでなく、人格的に優れているというニュアンスがあり、「利口」は、少しずるくて小才がきくというニュアンスを伴うことがある。角川学芸出版『類語国語辞典』より引用
怜悧は人についてだけで、方法には使えないというのは重要なポイントですね!
こういった難しい言葉を使うときに間違って使うと恥ずかしいので、しっかりと正しい使い方を覚えときましょう!
怜悧狡猾の意味や読み方は?
さてさて、冒頭の疑問に戻りまして…最近、ゲームなどで見かける“怜悧”のつく熟語に、“怜悧狡猾”がありますが、この熟語はどんな意味なのでしょうか?
【怜悧狡猾】れいりこうかつの意味
・悪賢いこと。怜悧は賢いさま、狡猾はずる賢いさまを意味する表現。 (実用日本語表現辞典)
と辞書にはありました。
怜悧狡猾についての説明は、昔ながらの紙の辞書では見つけられず、WEB上の辞書に記載があったため、比較的新しい使われ方なのかな?とも思いましたが、
太宰治『人間失格』の中で
怜悧狡猾を使った例文
- ごまかしてゐるのは、れいの俗諺の「さはらぬ神にたたりなし」とかいふ怜悧狡猾の処生訓を遵奉してゐるのと、同じ形だ
という風に使われていることから、あまり一般的ではないものの、昔から使われる四文字熟語という事が分かりますね!
怜悧の英語表現は?
最後に、“怜悧”は英語ではどのように表現すればいいのか、調べたいと思います。
辞書では、“怜悧な”または“怜悧さ”の形で載っていて、
【怜悧な】
- bright…利口な
- clever…頭の回転が早い、抜け目がない
(以上 大修館書店『ジーニアス和英辞典』より) - intelligent…理解力のある
(日外アソシエーツ辞書編集部編『斎藤和英大辞典』より)
【怜悧さ】(以下、情報通信研究機構「日本語WordNet」より)
- wisdom…賢いこと
- wiseness…賢明さ
- sapience…知恵
といった表現がありました。
“怜悧”よりもむしろ英単語の方がなじみがありますね!。
ただ、“怜悧”の細かいニュアンスをそのまま訳すのは、難しいことも分かります。
なかなか自分では使う機会のない“怜悧”ですが、自分で使えたり、小説などにでてきた時にサラっと意味を理解出来たらカッコイイ言葉ですから、しっかりと意味を理解しておきたいですね!
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!