先日、なにやら元気のない様子の友人から「鬱憤がたまってる・・・」とメールがきました。
なんとか友人を励ましてあげたかったのですが、私は”鬱憤“の意味がいまいち分からず。。。適切な返信ができたのか気がかりです。
そこで今回は”鬱憤“について調べてみたいと思います!
鬱憤の意味や読み方は?
では早速、辞書で“鬱憤”の意味と読みを確認したいと思います!
【鬱憤】―各辞書の記載は?―
- うっ‐ぷん【鬱憤】
・外へ出さないで心の中に抑えている怒りや恨み。また、そういう気持ちが積もること。
(小学館『デジタル大辞泉』より) - うっ‐ぷん【鬱憤】
① 内にこもりつもった怒りや不満。晴れないうらみ。
② (━する) 不平、不満の気持が心にこもってつもること。また、そのさま。
(小学館『日本国語大辞典精選版』より) - うっぷん【鬱憤・欝憤】
① 心の中に積もり重なった怒り・恨み。
② 不平・不満が心に積もりこもること。
(三省堂『大辞林 第三版』より) - 鬱憤【うっぷん】
・積もり積もった怒りや不満。
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』より) - うっぷん【鬱憤】
・長い間抑えて来て、我慢しきれなくなった怒り(不満)。
(三省堂『新明解国語辞典 第七版』より)
小学館『日本国語大辞典精選版』と三省堂『大辞林 第三版』の②の意味は、例文がどちらも『太平記』からとられているため、現代ではあまり一般的ではないと考えることができます。
それをふまえて、ざっくりと自分なりに、現在“鬱憤”が使われる際の意味などをまとめてみたいと思います!
【鬱憤】の意味と読み方のまとめ
<読み方>うっぷん
<意味>外に出さず、心の中で積もり重なった、怒りや不満、恨み
鬱憤の正しい使い方の例文は?
それでは、“鬱憤”は具体的にはどのように使えばよいのでしょうか。
まずは辞書の例文を見ていきます!
【“鬱憤”の使い方-各辞書の例文-】
- 「―を晴らす」
(小学館『デジタル大辞泉』・三省堂『大辞林 第三版』・三省堂『新明解国語辞典 第七版』) - 「日ごろの―を晴らす」
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』)
なんと、どの辞書でも【晴らす】という表現の例文が取り上げられていました!
では、続いて、実際の文章の中ではどのように使われるのかも見てみたいと思います。
【“鬱憤”の使い方-実際に文中で用いられている例-】
- さすがに最近は手を上げなくなった。 しかしその分、父の中に鬱憤が溜まっていることが手にとるように分かる。
(山本文緒『プラナリア』より) - 啓子に逃げられた弘子は、鬱憤のはけ口を有里のところへ持って行った。
(平岩弓枝『旅路(下)』より) - 人生の行手に全く希望が持てぬ鬱憤がそうさせたのかも知れない。
(池波正太郎『人斬り半次郎 幕末編』より) - 犯人には犯人らしい怨みや鬱憤があったのだろう。
(横溝正史『蝶々殺人事件』より) - 軽く唇を噛んだところに、日頃の鬱憤が込められているようだった。
(東野圭吾『探偵ガリレオ』より)
実際に使われる例を見ていくと、辞書に記載される例文とは全く異なり、「晴らす」が使われているものはなかなか見つかりませんでした。これは意外でした!
“鬱憤”+【晴らす】の使い方は、代表的ではあるものの、実際には多く使われているわけではないようです!
鬱憤の類語は?
続いて、“鬱憤”の類語を角川学芸出版『類語国語辞典』で確認してみます!
辞書の中では“鬱憤”は【怒り(非常に不満で腹を立てること)】のグループに分類されています。このグループには他に
- 怒る
- 腹が立つ
- 癪(しゃく)・・・腹が立つこと
- 気色ばむ(けしきばむ)・・・むっとして怒りを顔に出す
- 憤る(いきどおる)・・・恨み怒る。怒りがわきあがる
- 余憤(よふん)・・・収まりきらないで残っている憤り
- 憤懣(ふんまん)・・・憤って我慢できないこと。その気持ち
といった表現があげられていました!
また、注釈に〈「怒る」は、多く外面的行動を伴うことが多いが、「憤る」は、やや内向的で怒りを抑えためるような感がある〉とありました。
こういう違いがあるのですね!
また、上にあげた以外の表現にも下のような表現も“鬱憤”と近い意味を持つとされています。
- 虫の居所が悪い・・・機嫌が悪くて本来おこらなくてよいことでも、むやみにおこる
- 腹の虫が承知せぬ・・・腹立つ心を抑えがたい
- 冠(かんむり)を曲げる・・・機嫌を悪くする
- 腸(はらわた)が煮えくり返る・・・我慢ならないほどに腹が立つ
今まで考えたこともなかったですが、「怒り」に関する日本語って本当に沢山あるのですね!
鬱憤の英語表記は?
それでは次に、“鬱憤”の英語表現を確認してみましょう!
- vent one’s anger.(鬱憤を晴らす)
- He gave vent to his feeling of bitterness against them.(彼らに対する鬱憤をぶちまけた)
- Unable to contain his anger, he kicked the door.(彼は鬱憤やるかたなくドアをけった)
(以上 小学館『プログレッシブ和英中辞典』より)
このように、【anger】や【bitterness】を使うのですね。
また、【pent-up】を伴って、【pent-up anger】とする例もありました。
ちなみに、【bitterness】は【bitter】(ビター)の仲間で、「苦さ・辛さ」という意味が、【pent-up】には「うっ積した」という意味があります。
まとめ
それでは最後に、今回のポイントをまとめたいと思います!
- “鬱憤”の読み方は「うっぷん」
- “鬱憤”は「外に出さず、心の中で積もり重なった、怒りや不満、恨み」という意味
- 【憤】の字には、「心の中にある怒り」というニュアンスがある
それでは最後までお読みいただきありがとうございました!