先日友人から、「議事録を手書きで作るなんて、時代錯誤も甚だしくて、嫌になる!」とメールが来ました。
この、“甚だしい”、自分ではなかなか使うことのない言葉です・・・。意味もあいまいなので、これを機に“甚だしい”について調べてみたいと思います!
甚だしいの意味や読み方は?
はじめに、辞書で“甚だしい”の読み方と意味を確認したいと思います。
【甚だしい】各辞書の意味
甚だしい【はなはだ・し】
・ 程度が普通の状態をはるかにこえている。
(三省堂『大辞林 第三版』より)
甚だしい【はなはだ・し】
・普通の度合いをはるかに超えている。
(小学館『デジタル大辞泉』より)
甚だしい【はなはだし・い】
・程度がはげしい。ひどい。
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版 』より)
甚(だ)しい【はなはだ し・い】
・好ましくない状態の程度が限度を超えているととらえられるほどひどい様子だ。
(角川学芸出版『類語国語辞典』より)
“甚だしい”ははなはだしいと読むのですね!
意味は、ざっくり「普通の程度を超えていて、ひどい」ということです!
<読み方>はなはだしい
<意味>普通の程度を超えている。ひどい。
甚だしいの正しい使い方の例文は?どんな時に使う?
では、“甚だしい”はどのように使えばいいのでしょうか?
まずは、各辞書の例文を見ていきたいと思います!
【各辞書の例文】
「 - ・く不穏当な発言」
「無知も-・い」
(三省堂『大辞林 第三版』より)
「―・い被害」
「非常識も―・い」
(小学館『デジタル大辞泉』より)
「誤解も―」
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版 』より)
「-災害に見舞われる」
「時代錯誤も―」
「誤解も―」
「本末転倒も―」
(角川学芸出版『類語国語辞典』より)
といったように、各辞書の例文をみていくと、“甚だしい”は〔望ましくないこと〕に対して使われているのがわかります!
では続けて、実際の文章の中ではどのように使われるのかも調べてみましょう!
【実際に文中で用いられている例】
・兄の見地に多少譲歩している父も無事に納得した。 けれども黙っていたお重には、それが甚だしい不愉快を与えたらしかった。
(夏目漱石『行人』より)
・即ち恐怖のときには心臓の鼓動が遅くなり甚だしい時には停止します。
(小酒井不木『人工心臓』より)
・甚だしく大きく豪華であり、金塗りの大きな部屋がいくつもある。
(山田風太郎『忍法流水抄』より)
・俳優を志すことは無謀も甚だしい。
(岸田国士『対話させる術』より)
必ずしもすべてがとは言い切れませんがやはり、“甚だしい”はおおむね〔望ましくないこと〕に使われていると、こちらの例からも考えられます!
甚だしいの類義語は?著しいとの違いも!
次に“甚だしい”の類語を調べてみたいと思います。
角川学芸出版『類語国語辞典』では、“甚だしい”と同じグループの表現として
・千万(せんばん)・・・この上もないさま。程度の甚だしいようす。
・甚大(じんだい)・・・程度が甚だしいこと。(好ましくないものに使う)
・非常に
・著しい(いちじるしい)
などの表現をあげています。
では、この、“著しい”と“甚だしい”はどのような違いがあるのでしょうか?
“著しい”の意味を簡単に確かめると、
程度が際立っていて目立つさま。はっきりとわかるさま。めざましい。明らかだ。
「成績が-・く向上する」 「科学技術の-・い進歩」
(三省堂『大辞林 第三版』より)
とあります。
例文に〔成績の向上〕や〔科学技術の進歩〕が使われていることから、“著しい”は〔望ましいこと〕に対しても使われることがわかります。
つまり、“甚だしい”は主に〔望ましくないこと〕に、対して、“著しい”は〔望ましいこと〕にも使われるという違いがあると言えますね!
甚だしいの英語表記は?
最後に、“甚だしい”の英語での表現を確認したいと思います!
「日本語WordNet」では“甚だしい”を次のような表現で英訳しています。
・grossly・・・大いに、ひどく、粗野に、下品に
・flagrantly・・・目に余るさまの
・severe・・・過酷な、容赦のない、痛烈な
・heavy・・・(量・程度など)猛烈な、激しい、大量に
・extreme・・・極度の、非常な、きわめて厳しい、極端な、過激な、先端の
〔heavy〕や〔extreme〕は、普段から耳にすることの多い単語ですよね。このような単語も“甚だしい”の意味合いをもっているのは興味深いです。
まとめ
では、今回のまとめです!
・“甚だしい”は「はなはだしい」と読む
・意味は、「普通の程度を超えている。ひどい。」
・類語には【著しい】【すこぶる】などがあり、【著しい】は「望ましいこと」「嬉しいこと」にも使われるのに対して、“甚だしい”は主に、「望ましくないこと」「嫌なこと」に対して使われる。
それでは、これで今回はおしまいです。
最後までお読みいただきありがとうございました!