先日、年配の方にお見舞いのメールをしたところ、「一週間前よりは幾分回復しています」とのお返事を頂きました。・・・ただ、“幾分”の意味がいまいちわからず、当たり障りのない返信をしてしまいました。
もうこんなことがないように、今回は“幾分”について調べてみたいと思います!
幾分の意味や読み方は?
では早速、辞書で“幾分”の意味と読みを確認したいと思います!
【幾分】各辞書の意味
いく‐ぶん【幾分】
①いくつかに分けたうちの一部分。いくらか。
②程度が小さいさま。いくらか。少し。
(小学館『デジタル大辞泉』より)
いくぶん【幾分】
①全体をいくつかに分けた一部分。
②ある程度。いくらか。少し。
(三省堂『大辞林 第三版』より)
いく‐ぶん【幾分】
① いくつかの部分に分けること。また、その分けられた部分。一部分。また、すこし。
②いくらか。ある程度。すこし。
(小学館『精選版 日本国語大辞典』より)
幾分【いくぶん】
【一】いくつかの部分に分けること。また、その部分。「財産の―かを与える」
【二】いくらか。ある程度。少し。「―寒さがゆるむ」
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』より)
と、各辞書ではこのように記載されています。“幾分”は「いくぶん」と読むんですね!
そして、意味が二種類に分けられるのですね!
それでは、自分なりに意味をざっくりとまとめてみたいと思います!
【幾分】の意味と読み方のまとめ
<読み方>いくぶん
<意味>
①いくつかの部分に分けること。また、その一部分。すこし。
②ある程度。いくらか。少し。
各辞書を見ていくと、②の意味はどの辞書もほぼ同じ表現で記載していますね!
幾分の正しい使い方の例文は?
それでは、“幾分”はどのように使えばよいのでしょうか。
まずは辞書の例文を上の意味の①②で分けて見ていきます。
【幾分の使い方-各辞書の例文-】
〔①いくつかの部分に分けること。また、その一部分。すこし。〕
「もうけの幾分かを分けてやる」
(小学館『デジタル大辞泉』より)
「蔵書の-かを寄贈する」
(三省堂『大辞林 第三版』より)
「財産の―かを与える」
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』より)
「収入の―かを分ける」
(三省堂『新明解国語辞典 第七版』より)
〔②ある程度。いくらか。少し。〕
「幾分気がひける」「幾分できが悪い」
(小学館『デジタル大辞泉』より)
「 -寒い」 「 -かよくなる」 「 -心もとない」
(三省堂『大辞林 第三版』より)
「―寒さがゆるむ」
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』より)
「室温を―高めに設定する」
(三省堂『新明解国語辞典 第七版』より)
①では「分ける・与える・寄贈」など、“相手にあげる”といった表現と共に使われる例文ばかりでした。一方、②では、温度に関する例文が多いのが印象的ですね。
幾分の類語は?多少、若干との違いも!
続いて、“幾分”の類語を確認してみましょう!
角川学芸出版『類語国語辞典』では “幾分”を【A〔少ない〕数量がわずかしかない】、【B〔少々〕程度が少しばかりであること】の二つのグループに分類し、類語を記載しています。
Aの方の類語には・・・
- ちょっぴり
- 僅か(わずか)
- 多少
- 雀の涙
- 数える程
などがあげられています。
Bの類語には
- 微か(かすか)
- 仄か(ほのか)
- 多少
- 心持ち・・・少しはそういう気がするくらい。ほんの少し。
などが記載されています。
AもBもざっくりと言ってしまえば「少ない」ということですが、それが〔数量〕なのか〔程度〕なのかで類語が違ってくるということ自体が、私自身はとても興味深いなと思いました!
さて、“幾分”と似たように感じる表現に【多少】や【若干】がありますね。これらのことばと“幾分”はどのように違うのでしょうか?
まずは【多少】について考えてみたいと思います。
三省堂『新明解国語辞典 第七版』によると、
【多少】
①多いか少ないか。多寡(たか)。「―に関わらず配達します」
②その数量・程度などがそのほどのものではない様子。
という意味だとしています。
①の意味は“幾分”にはありませんね!ですので、①の意味では【多少】と“幾分”は置き換えられないということになります。
続いて、【若干】について見てみましょう。
三省堂『新明解国語辞典 第七版』では
【若干】
・そうむやみに多くはないが、ある程度の数量には上るということを表す語。
「不審の点が―有る」
と解説されています。
つまり、“幾分”や【多少】は「少ない」という意味合いに重心が置かれた表現だったのに対して、【若干】は「ある程度はある」という「ある」ことに重きを置いた表現ということですね!
また、“幾分”に特徴的な意味合いとして
・何かと比べてわずかではあるが程度の違いが認められる様子
(三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
との記載があり、他のものとの比較がニュアンスにあると言えます。
では、簡単にまとめます!
“幾分”と【多少】【若干】の違い
- 【多少】には〔多いか少ないか〕という意味があるが“幾分”にはない
- 【若干】は〔ある〕ことが意味の核だが、“幾分”【多少】は〔少ない〕ことが意味の核
- “幾分”には〔ほかのものと比べて〕というニュアンスがある。例えば、「熱は幾分ましになった」といった場合、〔前に比べて〕というニュアンスを含んでいる。
幾分の英語表記は?
それでは次に、“幾分”の英語表現を確認してみましょう!
研究社『新和英中辞典』では、“幾分”の訳として
- 【some】【something】・・・幾らか
- 【a part】【a portion】・・・一部分
- 【partly】【partially】・・・部分的に
といった記載されています。
文中で使われる例では、
・save something from one’s income.
(収入の幾分かを貯蓄する)
があげられていました!
まとめ
それでは最後に、今回のポイントをまとめたいと思います!
- “幾分”の読み方は「いくぶん」
- “幾分”は
①いくつかの部分に分けること。また、その一部分。すこし。
②ある程度。いくらか。少し。
という意味 - “幾分”には〔ほかのものと比較して〕というニュアンスがある
それでは最後までお読みいただきありがとうございました!