最近、時代小説にはまっているのですが、その中に「悄然として八丁堀から帰って来る」という一文がありました。
話の流れ的に、“テンション低く”みたいな意味かなとは思ったのですが、なんとなく気になってしまいました。
小説の世界をちゃんと理解するためにも、“悄然”についてきちんと調べてみたいと思います!
悄然の意味や読み方は?
まずは、何がともあれ、角川書店『角川新字源改訂版』でそれぞれの漢字の読み方と意味を確認したいと思います!
悄・・・ショウ
(A)①うれえる。しおれる。②しずか。
(B)きびしい。はげしい。
なんだか、(A)と(B)とでは逆の意味の様にも思えますよね。不思議な漢字だなと感じました。
また、“悄”の使われる熟語の例として“悄然”が紹介かれていて、
【悄然】しょうぜん・・・うれえ悲しむさま。心のものさびしいさま。
と書かれていました。
一方、“然”は
然・・・ゼン/ネン
①もえる。 ②明らかにする。 ③しかり。そのとおり。 ④もっともと認める。⑤状態を表わす形容詞のあとにそえることば。「猛然」
といろいろな意味が紹介されていました!
辞書には他の意味も書いてありましたが、一部を抜粋して紹介しました。
⑤に出てくる、【形容詞】というのは、「物事の性質・状態などを表わすのに用いられることば。日本語では(中略)“美しい”“高い”のように「い」で終わる言葉。」(三省堂『新明解国語辞典第七版』)だそうです。
①から④だと、“悄”と組み合わせても意味が通じませんが、“悄”は物事(人)の様子を表わす言葉なので、⑤の意味ととらえてよさそうですね。
それでは改めて、色々な辞書で“悄然”の意味を調べてみたいと思います。
【悄然】しょうぜん
- 元気がなく、うちしおれているさま。しょんぼり。
- ひっそりと静かなさま。
(小学館 デジタル大辞泉より)
- 心にかかることがあって元気がないさま。
- ひっそりして寂しいさま。
(三省堂 『大辞林 第三版』より)〔「悄」は、静かで物寂しい形容〕元気を無くしている様子だ。「-(=しょんぼり)と立ち去った/孤影-」
(三省堂 『新明解国語辞典 第七版』)
と紹介されていました。”悄然“というとなかなかイメージがつかめませんが、”悄然“=「しょんぼり」または「ひっそり」と言い換えるととても分かりやすいと思います!
また、“然”を上の⑤の役割と考えるなら、“然”そのものは特別な意味を持たないはずなのに、“悄”と”然“を組み合わせて”悄然“ということばになると、【きびしい。はげしい。】という意味合いを持たなくなるのはとても興味深いですね。
悄然の正しい使い方の例文は?
では、どんな風に“悄然”は使えばいいのでしょう?
- 「悄然たる後ろ姿」「悄然としてうつむく」「―として声なし」(小学館 デジタル大辞泉より)
- 「 -と去る」 (三省堂 『大辞林 第三版』)
- 「悄然とたたずむ。」「痛ましいほど悄然とする。」(三省堂 『てにをは連想語辞典』 より)
- 「ひとり悄然と酒杯を重ねる」(三省堂 『てにをは辞典』 より)
といった例文が辞書では紹介されていました。これらの例文は、うえで紹介した「しょんぼり」「ひっそり」どちらの意味としてとらえることもできますね。
・・・いやぁしかし、どれもかたい表現ですね。
それもそのはず、角川学芸出版 『類語国語辞典』の”悄然“の項目に≪文章≫という注釈がついていました。
≪文章≫とは”文章語“のことで、「文章を書くときに用いられる言葉。」(三省堂 『大辞林 第三版』)ということなので、話し言葉としてはあまり使わない表現ということなのですね。
なので、“悄然”は普段の会話の中で使ってしまうと、違和感がある場合もあるので、注意が必要です!
孤影悄然の意味や由来は?
ところで、「孤影悄然」って四字熟語、先ほど“悄然”の意味を調べた時に 『新明解国語辞典 第七版』(三省堂)に出てきて、私は初めて知ったのですがこれは、どういう意味なのでしょうか?
- 一人ぼっちでさびしげなさま。一人だけで悲しむさま。▽「孤影」は一人ぼっちでさびしげな姿。「悄然」は憂い悲しむさま。物さびしいさま。「悄」は「蕭」とも書く。(三省堂 『新明解四字熟語辞典』)
- 独りぼっちで、寂しそうにしている姿。「影」は姿・かたち。「悄然」は元気がないさま。憂えているさま。(現代言語研究会著 『四字熟語の辞典』あすとろ出版)
とありました。ひたすらに寂しい、せつない情景です・・・。調べれば調べるほどに、しょんぼりとした気分になってしまう四字熟語でした。
悄然の英語表記は?
最後に、研究社 『新和英中辞典』で“悄然”の英語表現も調べてみました。
【悄然と】
- sadly
- despondently
- dejectedly
【悄然としている】
- look depressed [cast down]
- be down in the mouth
などの表現が紹介されていました。
【Sadly】はsadの副詞形ですね。
【Despondently】の元の形はdespondent(元気のない)です。
【depressed】は動詞depress(意気消沈させる)の過去形、または過去分詞です。
また、【down in the mouth】は話し言葉としてよく使われる表現で、“しょげて/がっくりして”といった意味があります。【mouth】は口のことですよね。
今回は、なんとなく悲しい気持ちで言葉の意味調べ、終了です・・・
では、最後までお読みいただきありがとうございました!