先日、池波正太郎の『剣客商売』を読んでいたところ、「こうした場合には母性的な本能が自ずと発露するものらしい」という文章がありました。
“発露”って?全く意味が分かりません。
そこで今回は、“発露”について、いろいろと調べてみました!
発露の意味や読み方は?
では、はじめに辞書で“発露”の読み方と意味を確認して辞書の記載を紹介した後、次に意味をまとめていきたいと思います!
【発露】各辞書の意味
・〔はつろ〕心の中にあるものや隠していたことがおもてに現れ出ること。また、現し出すこと。
・〔ほつろ〕犯した罪を隠さず告白すること。
(小学館『デジタル大辞泉』)
・〔はつろ〕表面にあらわれること。また、隠していた事などがあらわれること。ほつろ。
・〔ほつろ〕犯した罪を隠すことなくあらわすこと。はつろ。
(三省堂『大辞林 第三版』)
・〔はつろ〕心のうちなどが自然に表面にあらわれ出ること。流露。あらわす。
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』)
・〔はつろ〕その人の気持ちなどが自然に態度・行動に現れること。「愛情の―」
(三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
・〔はつろ〕自然に現れ出ること。「ほつろ」とも。
(角川学芸出版『類語国語辞典』)
読み方は、〔はつろ〕〔ほつろ〕二つあるのですね。
ただし、〔はつろ〕と読む場合は②の意味にはならないので、注意が必要です!
また、角川学芸出版『類語国語辞典』では口語ではなく、主に文章を書くときに使用される【文章語】に分類されていました。
このことから、”発露“は気軽な表現というよりは、やや形式ばった表現だと考えられます。
①隠していたことや、心の中にあることが、(自然と)表にあらわれること。
→読み方は〔はつろ〕が一般的だが、〔ほつろ〕とも。
②罪を隠さず、あらわすこと。(例文から考えると古い使い方。)
→読み方は〔ほつろ〕。
ちなみに、医学用語にも“発露”があり、その場合は
発露の正しい使い方の例文は?
次に、“発露”の具体的な使い方を見てみたいと思います。
【各辞書の例文】
①の意味では・・・
・「真情を発露する」
(小学館『デジタル大辞泉』)
・「善意の-」
・「其策の-せんことを恐れ/花柳春話 純一郎」
(三省堂『大辞林 第三版』)
・「愛情の―」
(三省堂『新明解国語辞典 第七版』)
・「愛情の―からの行為。」
・「本能の―」
(角川学芸出版『類語国語辞典』)
②の意味では・・・
・「五体を地に投げ、―啼泣(ていきふ)し給ひしかば」〈平家・一〇〉
(小学館『デジタル大辞泉』)
・「悪事を成して後は、-して咎を悔ゆ/正法眼蔵随聞記」
(三省堂『大辞林 第三版』)
といった例があげられていました。
ちなみに、①の例文にある【真情】は「ほんとうの気持ち」という意味です。
①の意味では、例文が「気持ち」と「本能」に関するものがほとんどで、「事柄」に対して使うのは、現在ではあまり一般的ではないようです。
発露の類語は?
では“発露”と似た表現にはどのようなものがあるのでしょうか?
これまで辞書を確認した中では、ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』で、
・流露
・あらわす
という2表現が記載されていました。
また、角川学芸出版『類語国語辞典』では“発露”は「見えるところに現れ出ること」を表現する言葉に分類されていて、このグループには他に、
・表す
・出る
・浮かぶ
・浮き出る
・煥発(〔かんぱつ〕内なるものが盛んに外に現れでること。)
・流露(〔りゅうろ〕押さえきれずに現れ出ること。)
といった言葉が紹介されています。
どちらの辞書にも共通して【流露】【あらわす】が記載されていたことから、この二つの言葉は特に“発露”と近い表現のようです!
発露の英語表記は?
では最後に、“発露”の英語での表現を確認していきたいと思います。
“発露”にあたる単語には
・appearing
・display
(研究社『新英和中辞典』/日本語WordNetより)
などがあがられます。
【expression】は「表現(すること)、表われ、しるし」といった意味の単語です。
また、【display】は日本語でも「ELディスプレイ」などの言葉で使われますね。
また、これらの単語を用いた例文には
・a display of emotion〔感情の発露〕
(日本語WordNetより)
・What he did was nothing but an expression of his love for his country.〔彼の行動はまさしく国を思う心の発露であった〕
(研究社『新英和中辞典』)
といったものがありました。
“発露”は日本語でも形式ばった表現ですが、英語の例文も普段使いというよりは、かたい表現なのは、興味深いなと思いました。
まとめ
それでは最後に、今回調べたことのポイントをまとめてみます!
・“発露”の読みは〔はつろ〕と〔ほつろ〕の二種類ある
・意味は
①隠していたことや、心の中にあることが、(自然と)表にあらわれること。この意味の場合、読み方は〔はつろ〕が一般的だが、〔ほつろ〕と読むこともある。
②罪を隠さず、あらわすこと。(古い使い方。)この意味の場合、読み方は〔ほつろ〕。
・“発露”は主に文章で用いる、かための表現
それでは最後までお読みいただきありがとうございました!