以前から自分がプレイしているゲームに“鉄面皮”という能力が出てきます。
プレイ中はゲームの特別なことばなのかな・・・という感じで特に気にも留めていなかったのですが、先日、太宰治の著書に『鉄面皮』という作品があることを知り、昔からある言葉だったんだ!ととても驚きました。
今回は“鉄面皮”という表現について調べてみたいと思います!
鉄面皮の意味や読み方は?
まずは、“鉄面皮”の読み方と意味を辞書で確認していきたいと思います!
【鉄面皮】各辞書の意味
- てつ‐めんぴ【鉄面皮】
《鉄でできている面(つら)の皮の意》恥知らずで、厚かましいこと。また、その人や、そのさま。厚顔。
(小学館『デジタル大辞泉』より) - てつめんぴ【鉄面皮】
・〔鉄でできた面つらの皮の意〕恥を恥と思わないこと。厚かましいこと。また、そのさま。そのような人をもいう。
(三省堂『大辞林 第三版』より) - 鉄面皮【てつめんぴ】
・(鉄のような面(つら)の皮の意)恥知らずであつかましいこと。また、そういう人
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』より) - 鉄面皮【てつめんぴ】
・あつかましくて、人からなんと言われようと恥いるふうも無いこと(人・様子)
(三省堂『新明解国語辞典 第三版』より) - 鉄面皮【てつめんぴ】
・鉄でできている面の皮。恥知らずで、ずうずうしいこと。その人。
(あすとろ出版『四字熟語の辞典』より) - 鉄面皮【てつめんぴ】
・鉄でできている面の皮の意味から、厚かましい人、恥を恥と思わない人のたとえ。また、その様子。
(あすとろ出版『故事ことわざの辞典』より)
このように、“鉄面皮”は「厚かましく、恥知らず」という意味なのですね!そして、読み方は「てつめんぴ」なのですね。
鉄面皮の語源は?
“鉄面皮”の語源は、上の意味調べで見た辞書をもう一度確認してみれば、一目瞭然ですね!
どの辞書にも、
- 《鉄でできている面(つら)の皮の意》(小学館『デジタル大辞泉』より)
- 〔鉄でできた面の皮の意〕(三省堂『大辞林 第三版』より)
- (鉄のような面(つら)の皮の意)(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』より)
- 「鉄でできている面の皮の意味から」(あすとろ出版『故事ことわざの辞典』より)
とあるように、
まるで顔の皮が丈夫でかたい金属でできていて、周囲の空気や人々の視線を感じていないかのよう⇒恥知らずというのが語源だと言えますね!
鉄面皮の正しい使い方の例文は?
では、“鉄面皮”はどのように使えばいいのでしょうか?
まずは辞書に記載された例文を見ていきたいと思います!
【各辞書の例文】
- 「鉄面皮な(の)男」
(小学館『デジタル大辞泉』より) - 「あんな-なまねはできない」
(三省堂『大辞林 第三版』より) - 「―な発言」
(ベネッセコーポレーション『ベネッセ国語辞典 電子特別編集版』より) - 「彼の―は尋常のものではなく、嘘をつくことなど何とも思っていないらしい。」
(あすとろ出版『四字熟語の辞典』より) - 「―なやつ」
(角川学芸出版『類語国語辞典』より)
印象のいい場面では使えない表現なのが、すぐわかりますね・・・。続いて、実際の文章の中ではどのように使われるのかも調べてみたいと思います!
【実際に文中で用いられている例】
- 図々しく鉄面皮であることも、快男児的英雄の一資格なのだ。
(海音寺潮五郎『新太閤記(四)』より) - そうとでも考えないことには、この男の鈍感、鉄面皮、無恥といった性格を説明できないのだ。
(鮎川哲也『朱の絶筆』より) - よほど鉄面皮だからであり、鉄面皮になれるのは、自分のことをすっかりタナに上げてしまっているからである。
(塩田丸男『口下手は損ですか 面白い話をするための12章』より) - 小説を書くなどということに本名を出すのは鉄面皮でなければできるものでないと思ったのである。
(なだいなだ『パパのおくりもの』より) - ひょっとしたら、鉄面皮というのは、男の美徳なのかも知れない。とにかく、この文字には、いやらしい感じがない。
(太宰治『鉄面皮』より)
このように、実際に文章で使われる例を見てみると、自分自身に対して使うこともできることに気が付きました!
また、太宰が個人的な感覚としてではあるかもしれませんが、“鉄面皮”にそこまでマイナスイメージをもっていないのは、とても面白いなと思いました!
とはいえ、辞書の例文にあるように、多くの人は“鉄面皮”という表現からはその人を非難しているマイナスのニュアンスを受け取る可能性が高いため、使う場面には注意が必要ですね!
鉄面皮の類語は?
それでは、“鉄面皮”に似た表現にはどのようなものがあるのでしょうか?
まず、角川学芸出版『類語国語辞典』を参考に見ていきたいと思います。
『類語国語辞典』では、“鉄面皮”は「極めて図々しいこと。面の皮が鉄でできているように厚かましいこと。その人」と解説されていて、同じグループには次のような表現があります。
- 図々しい(ずうずうしい)
- 心臓が強い・・・厚かましい、図々しい
- 厚顔・・・ずうずうしいこと。面の皮が厚い意から。
- 面の皮が厚い
- 恥知らず
- 無恥・・・恥を恥とも思わないこと。
少し、面白い表現には、
千枚張りの面の皮・・・きわめて図々しいこと。
というものもありました!
上にあげた【厚顔】と【無恥】は【厚顔無恥】と四字熟語で使われることもありますね!
鉄面皮の英語表記は?
それでは次に、“鉄面皮”を英語ではどのように表現するのか確認していきましょう!
研究社『新和英中辞典』では、“鉄面皮な”の訳として
- shameless・・・恥知らずの、破廉恥な、ずうずうしい
- thick‐skinned・・・(非難・侮辱などに対して)鈍感な,無神経な,厚顔な.
- unblushing・・・恥知らずの、厚かましい
- brazen‐faced・・・厚かましい,ずうずうしい.
を記載しています。
【shameless】は「恥ずかしさ」という意味の【shame】と「無い」という意味の【less】が組み合わさっていますね。
【unblushing】も「顔を赤らめる」という意味の【blushing】に否定の接頭語【un】がついた形です。
また、【thick‐skinned】の【thick】は「厚い」という意味ですので、【thick‐skinned】は直訳すると「皮の厚い」という意味になります。
【brazen‐faced】の【brazen】は「真ちゅうでできた、真ちゅう製の」という意味です。
【thick‐skinned】や【brazen‐faced】のように、英語にも日本語の【面の皮が厚い】や“鉄面皮”と似た表現があるのはとても興味深いですね!
まとめ
それでは最後に、今回のポイントをまとめたいと思います!
- “鉄面皮”の読み方は「てつめんぴ」
- “鉄面皮”は「厚かましく、恥知らず」という意味
- “鉄面皮”という表現にはその人を非難するニュアンスがあるため、使う場面に注意
- 類語には【厚顔】【図々しい】などがある
それでは最後までお読みいただきありがとうございました!